今回は静岡県熱海市にある「ClubB HUBlic」のWebサイトを制作させて頂きました。今回もいきなりデザインやレイアウトから入ったのではなく、「そもそも、ClubB HUBlicとはどんな場所なのか。」まずはそれを深く知ることから始めました。
積み重なったものを、一度ほどく。
これまでのWebサイトは、5年以上にわたってスタッフさんの方々自身の手で更新されてきたものでした。長く使われてきたサイトには、その場所の歴史がありました。
講座があり、法人向けのサービスがあり、過去の活動があり、クラウドファンディングの記録がある。どれも、HUBlicが歩いてきた時間の一部です。けれど、過去に必要だった情報が、今も必要とは限りません。
新しく何を加えるかよりも先に、今のCLUB HUBlicに必要な情報の整理から始まりました。
整理した結果、CLUB HUBlicはコワーキングスペースであり、「働く場所」「交流の場所」そして「学ぶ場所」ということ。


「伝えたいこと」より、「知りたいこと」。
サービスを提供する側が載せたいものを載せてしまうと、利用する人にとっては必要のない情報もある。Webサイトをつくっている身である私は、つい色々情報を足したくなります。あれも伝えたい。 これも知ってほしい。けれど情報が増えるほど、訪れた人にとって大切なものが見えなくなってしまうことがあります。
初めてCLUB HUBlicを知った人が、本当に知りたいことは何だろう。「ここはどんな場所なのか。」「自分は利用できるのか。」「いくらなのか。」そして、「どうすれば利用できるのか。」そこからサイトの入口を、大きく二つに整理しました。
ひとつは、ドロップインで利用したい人。もうひとつは、会員としてこの場所に関わりたい人。情報を増やすのではなく、迷う理由を減らしていく。それを今回の情報設計の軸にしました。
でもそれだけがCLUB HUBlicを成り立たせている要素ではありません。机がある。Wi-Fiがある。個別ブースがある。会議室がある。仕事ができる。それらは確かに大切な情報です。けれど、それだけをきれいに並べても、CLUB HUBlicという場所を伝えたことにはならない。
ここには、本があります。仕事をする人がいます。勉強する人がいます。誰かと話している人もいれば、一人で黙々と過ごしている人もいます。
そして、その奥には、この場所をつくった人の思いがあります。




理念は、書かずに漂わせる。
小林めぐみ
この世界に生まれてきた子どもたちに、生きること、働くことの喜びを伝えたい。
「未来や自分に、希望が持てる社会をつくる。」代表の小林さんが、独立した頃から変わらず持ち続けている軸です。
けれど今回、この理念をそのままWebサイトに掲げることはしませんでした。理念とは、立派な言葉を大きく掲げるよりも、その思想が本当にこの場所に流れているのなら、サイトの端々から微細に自然と感じ取れるものにしたいと思いました。そこで、理念を文章として置くのではなく、サイトを構成する一つひとつの要素へと散りばめていきました。
あまり大人が利用するようなビジネス的なデザインにせず、なるべくイラストや曲線を含ませて、子どもたち、そしてこれから頑張る若者たちの参入の壁を下げる仕掛けを施しました。



働く。学ぶ。つながる。
CLUB HUBlicは、仕事をするためだけの場所ではありません。本から学ぶ。人から学ぶ。街から学ぶ。誰かと話すこともあれば、一人で過ごすこともある。人とのつながりも、強制されるものではありません。いつも誰かと交流しなくてもいい。一人で仕事をする日があってもいい。けれど、何かあったときには頼れる人がいる。必要なときに、必要な人とつながれる。
そして人生のどこかで困ったときに、「助けて」と言える場所が街の中にある。そんな距離感もまた、CLUB HUBlicらしさの一つだと感じました。だからサイトでも、「交流」や「コミュニティ」を必要以上に押し出すことはしませんでした。そこに人がいること。それぞれが、それぞれの時間を過ごしていること。その風景から、この場所のあり方が伝わるようにしました。
すでにあるものからつくる。これが私のスタイルです(笑)
ロゴの色、形。ブランドカラー。実際に置かれている机や椅子。そこで仕事をする人たち。そして、本棚に並ぶ1,000冊を超える本。
一つひとつ拾いながら、人物や家具、本、空間をイラストとして描き起こし、Webの中へ移していきました。整いすぎたオフィスにはしたくない。かといって、雑多にもしたくない。少しだけ、人の手の跡が残っている。少しだけ、人の気配がする。そんな温度を残すことを意識しました。
言葉を置くのではなく、言葉の意味を置いていく。それが、今回のデザインで大切にしたことです。サイトを閉じたあと、文章を覚えていなくてもいいと思っています。ただ、「なんだか、ここは人を大切にしていそうだ」「ここなら、自分の居場所があるかもしれない」そんな小さな感覚を残すことができたら良いなと。
制作してみて。
今回の制作を通して、改めて感じたことがあります。Webサイトをつくる仕事は、画面の中だけでは完結しないということです。話を聞く。場所を見る。そこにいる人を見る。これまで積み重ねてきたものを見る。
必要なものと、役目を終えたものを分ける。そして、その場所が大切にしているものを見つける。デザインするのは、そのあとです。
その場所には、どんな時間が流れているのか。そこにいる人たちは、何を大切にしているのか。まだ言葉になっていないものを拾い集めて、文章や写真、イラスト、色、余白へと置き換えていく。それは少し、場所を別の言葉へ翻訳する作業に似ています。今回つくったのは、新しいCLUB HUBlicではありません。もともとそこにあったものを拾い集め、調理したら(一応シェフでもあるので笑)今作品が出来上がりました。
この場を借りて改めてお礼を申し上げたいのですが、協力してくれたCLUB HUBlic運営スタッフの高橋もかさん、素敵なイラストと文言の整理、一緒に制作したと言っても過言ではありません。そしてClub HUBlicの代表の小林めぐみさん、私に表現のきっかけを下さって本当にありがとうございました。
Club HUBlic
CLUB HUBlicは、静岡県熱海市にある会員制のコワーキングスペースです。
個別ブースや会議室、ミニキッチンなどの設備に加え、1,000冊を超える本が並ぶ「まちライブラリー」を併設。会員利用のほか、ドロップインでの利用もできます。熱海で仕事をする方はもちろん、旅先でのワークスペースを探している方にも開かれた場所です。
熱海を訪れた際には、ぜひCLUB HUBlicを覗いてみてください。