手段が変わっても、変わらないもの

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「仕事」とは、何だろう。

起業や事業について考えていると、結局のところ、その始まりには「誰かの役に立ちたい」「こういう人に使ってほしい」という、極めて個人的な思いがあるのではないかと思う。

技術や商品は、その思いを実現するための手段にすぎない。

たとえば、トヨタの源流は自動車ではなく、自動織機にある。豊田佐吉は織機の改良を重ね、やがてその発明は産業へと広がっていった。その後、トヨタは自動車へ進出する。

織機と自動車。表面的に見れば、まったく違うものをつくっている。けれど、その奥にある「ものづくりによって人や社会の役に立つ」という精神まで変わったわけではない。

表現が変わっただけなのだと思う。

任天堂も面白い。現在はNintendo Switchをはじめとするゲーム機やゲームソフトの会社として知られているが、その出発点は花札だった。

花札から、玩具へ。玩具から、ゲームへ。そして現在のデジタルエンターテインメントへ。

つくっているものは時代とともに大きく変化している。しかし、「遊びを通して人を楽しませる」という根っこの部分から考えれば、一本の線として見ることができる。

だからこそ、時代が変わっても生き残ることができるのだと思う。

私たちは「手段」に惑わされすぎている

現代は、あまりにも手段が多い。

プログラミングを学ぶ。動画編集を覚える。AIを使えるようになる。SNSを伸ばす。デザインを勉強する。

もちろん、どれも大切な技術である。けれど、それだけでは時代が変わったときに迷ってしまう。

「自分は動画編集者だから、動画をつくらなければならない」

「Web制作者だから、ホームページを売らなければならない」

そう考えてしまえば、その手段が必要とされなくなった瞬間、自分が何者なのか分からなくなる。

だから私は、技術より先に「なぜ、それをやるのか」が必要なのだと思っている。

自分は、誰のために仕事をするのか。何を世の中に残したいのか。何を美しいと思い、何だけは曲げたくないのか。

そこが定まっていれば、手段は変えてしまっていい。むしろ、時代に合わせて変えるべきなのだと思う。

私はホームページ制作者なのか

今の私は、WordPressでホームページをつくったり、動画をつくったりしている。

職業を聞かれれば、「Web制作をしています」と答えるのが一番早い。けれど、自分の中では、どうもしっくりこない。

私は、ホームページをつくることそのものを目的にしているわけではないからだ。

私が事業において面白いと思うのは、その人が事業を始めた理由である。

なぜ、この店を始めたのか。なぜ、この商品をつくっているのか。誰に届けたいのか。何を大切にしているのか。何だけは、絶対に妥協したくないのか。

私は、そこに興味がある。

そして、その目には見えない「創業精神」や「理念」や「哲学」を、サービスを受け取る人にも見える形にしてあげたい。

今は、そのための道具としてWordPressを使っている。

あるときは文章かもしれない。あるときは写真かもしれない。あるときは動画かもしれない。そして今後は、まったく別の技術を使っているかもしれない。

それでいい。

道具が変わっても、自分が何をしたいのかさえ変わらなければ、仕事は続いていく。

時代に合わせて変わることと、変わらないこと

私は占星術も扱うので、この感覚を冥王星的だと捉えることがある。

余計なものを剥ぎ取っていった最後に残る、本質的で強い動機。

時代が変わる。技術が変わる。社会が変わる。それでも最後まで残るものがある。

そこから逸れなければ、表現はいくら変えてもいい。むしろ一度古くなったとしても、時代に合った形へ表現を変えることで、再び生き返ることができる。

企業も、人間も、そうなのではないだろうか。

大切なのは、「変わらないこと」ではない。

何を変えて、何を変えないのかを知っていることだ。

商品は変えていい。技術も変えていい。肩書きも変えていい。

けれど、自分がなぜそれをやるのかという部分だけは、簡単に手放さない。

あなたには、軸がありますか

これは仕事だけの話ではないと思う。

仕事をしているときも。遊んでいるときも。誰かと関わっているときも。何かを選択するときも。

自分が掲げる生き様のようなもの。「これだけは曲げない」という、自分なりのルール。

それが一本あるだけで、人はずいぶん迷わなくなるのではないだろうか。

会社も同じだ。

企業理念とは、壁に掲げる立派な言葉ではない。迷ったときに戻ってくる場所なのだと思う。

そして、その理念が誰かの価値観と共振したとき、その人は単なる「顧客」ではなくなる。

「この人から買いたい」「この会社を応援したい」「またお願いしたい」

そう思ってくれる人になる。

商品そのものだけではなく、その奥にある思想まで含めて選んでもらう。そんな仕事ができたら、強い。

だから私も、ホームページをつくる前に、その人がなぜその仕事をしているのかを見つめていたい。

私はホームページをつくりたいのではない。

その人が大切にしているものを、他の誰かにも見える形にしたい。

今のところ、それが私の仕事なのだと思うと同時に、それしかできない笑笑